「花曇り」という言葉をご存じでしょうか?
この「花」とは「桜」のことで、古くから俳句や短歌などで「花」といえば「桜」のことを指し示してきたことによります。
つまり、桜の咲く季節の、うっすらと雲がかかるような天気のことを指し、春先の薄曇りのことを表します。なので、俳句では「花曇り」といえば春の季語となってるんですね。ご存じでしたでしょうか?
今回の記事では、「花曇り」の意味や由来、季語としての使い方について解説します!
花曇りの意味と由来は?
「花曇り」とは、冒頭でも触れたように、桜の咲く季節に、うっすらと雲がかかるような、薄曇りの天気のことを指します。
ですから、はっきりと空全体が分厚い雲で覆われているような天気の時には使わない表現。
「桜」といえば誰もが「お花見」を連想しますよね。
せっかくのお花見なのに、曇っているのは残念。桜を見て季節を感じたいけれど、曇っていてなんとなく物悲しい気持ちになってしまう。あるいは、逆にそうした桜の様子に、一種の哀愁を感じる。
そうした想い、感性から、「花曇り」という言葉ができたと言われています。
四季の楽しむ日本人ならではの感性から生まれた表現といっても過言ではありませんね。
関連記事:お花見の意味と由来とは?なぜ桜なの?そのルーツをご紹介。
季語としての使い方
「花曇り」は、時候の挨拶や古くは俳句にも使われてきたのです。勘の良い方は思い当たる俳句があるかも!?
その一例をご紹介してみます!
時候の挨拶
冒頭に「花曇り」を使う場合の例をご紹介します。
「桜の季節となりましたが、花曇りの日が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか」
「花曇りの折、桜の春色が恋しい季節となって参りました」
文末に「花曇り」を使う場合の例です。
「桜花爛漫のみぎりではありますが、花曇りの日々が続きます。どうぞお身体ご自愛ください」
「花曇りの候、まだまだ肌寒い日が続きます。お身体を大切にお過ごしください」
このように使います。たまには背伸びして手紙を書いてみるのも面白いかもしれませんね!
注意しなくてはならないのは、「花曇り」という言葉は、その意味や由来からして、桜が咲いている、もしくはその少し前後の極めて限られた時期にしか使えないことです。送る相手の住んでいる地域の桜情報など、気をつけて書きましょう。
俳句
春の季語として使われますが、「花曇り」を季語に使った俳句は数多く存在してるんですね。有名な作者のものを幾つかご紹介します。
夏目漱石
夏目漱石はとても甘党だったそうで、奥さんに止められても食べていたため、隠し場所を教えてくれる末の子を可愛がっていたというエピソードがあるほどです。そんな漱石の可愛らしい俳句です。
芥川龍之介
芥川龍之介は、誰もが一度は教科書で名前を見たことがある大正を代表する作家ですが、彼は俳句や短歌においてもその才能を発揮していたそうです。
この句は、遠くに見える火事がうっすらと曇り空の向こうに見える様子が浮かび上がってくる、まるで絵のような俳句です。
久保田万太郎
隅田川といえば、今でも桜の有名な地域ですが、このように久保田万太郎は生粋の江戸っ子として東京を愛し、東京を絵葉書のように切り取るような俳句をたくさん残しています。
「花曇り」を実際に使ってみよう!
今回の記事では、花曇りの意味や由来についてご紹介しました。また、花曇りという言葉は時候の挨拶や俳句などもに取り入れられ古くから親しまれてきた言葉でもありました。
「花曇り」という言葉の意味を知ると、とても風雅で情緒ある言葉であることがわかりますね。
ぜひ、時候の挨拶などに使ってみてはいかがでしょうか!